健康寿命をサポートするアミノ酸

その他のアミノ酸

日本は高齢化社会という言葉は、毎日のようにいたるところで目にしたり耳にしたりします。

それに伴って「QOL Quality of Life」という言葉も目にしたり耳にしたりする機会が増えました。平均寿命の延びと健康寿命の延びが同じであれば問題ないのですが、残念ながら平均寿命の延びに比例して健康寿命は延びていないようです。

そこで、健康寿命を延ばすためのサポートになるアミノ酸にはどんなアミノ酸があるか探ってみることにしましょう。

「健康寿命」と「QOL」

ご存知の方も多いとは思いますが、まずは「健康寿命」について確認しておくことにしましょう。

日本人の平均寿命は男性80.21歳、女性86.61歳になっています。毎年確実に平均寿命は延び続けています。

これに対して健康寿命は男性71.19歳、女性74.21歳になっています。

このデータによると、男性の場合はおよそ9年間、女性の場合はおよそ12年間医療や介護を必要とした生活を送らなければならないことになります。

健康寿命と平均寿命の間には、残念ながら大きな開きがあり、未だにこの差が狭くなる兆候は見られません。健康寿命とは、医療や介護を必要とすることなく、日常的に自立した生活を送ることが出来る期間になります。

これと合わせて「QOL Quality of Life=生活の質」という考え方も浸透して来るようになりました。この言葉の浸透と共に「ADL Activities of Daily Living=日常の生活動作」という言葉も広まりつつあります。

QOLは、闘病中の人の治療効果を上げたり、高齢者が適切な介助を受けることが出来たりしているかという問題だけに留まることではありません。

その人が人間らしく幸福な日常を満足して送っているかどうかを問題にするときに用いる言葉です。

こうしたギャップを埋めるための取り組みとして「スマート・ライフ・プロジェクト」が運営されていて、「運動」「食生活」「禁煙」の3分野を中心に行なわれています。厚生労働省によるプロジェクトで企業・団体・自治体と協力連携しながら行なわれています。

筋肉の強化・維持をサポートするアミノ酸「ロイシン」

少しでも生活の質をアップして、サポートすることが期待出来るアミノ酸を作用別にご紹介したいと思います。

まずは、筋肉量の減少を抑えて筋肉量の維持をサポートすることが期待出来るアミノ酸として「ロイシン」があります。

ロイシンは必須アミノ酸のひとつになります。筋肉の成長に欠くことの出来なBCAA(分岐鎖アミノ酸)に含まれています。

1日の必要摂取量は必須アミノ酸の中で最も多いアミノ酸になります。ロイシンの期待出来る作用として次のような作用があります。

筋肉の成長を促し筋肉も減少を抑制する作用

筋肉の主な成分タンパク質には「BCAA」に分類されている「ロイシン」、「バリン」、「イソロイシン」の3つのアミノ酸が多く含まれています。中でもロイシンはタンパク質の合成機能が格段に高い上に、筋肉の減少を抑えて筋肉量を保って強くする働きがあります。

インスリンの分泌を促進して、運動のパフォーマンス能力の向上や損傷した筋肉の修復作用などが期待出来ます。

また、疫学研究では、筋肉の合成に関わるアミノ酸の摂取量が多ければ、加齢や病気によって起こってしまう全身の筋力低下「サルコペニア」の発症リスクが低下したとのデータもあります。ロイシンの筋肉強化作用と筋肉減少抑制効果をより実感するためには、BCAAの仲間で筋肉の形成に深く関わっている「バリン」と「イソロイシン」も一緒に摂取した方が良いようです。

筋肉を強化し減少を抑制する作用以外にも、ロイシンには次のような作用が期待出来ます。

肝機能アップ作用

ロイシンには、肝機能をアップする作用が期待出来ます。

肝臓病に罹患してしまうと、アルブミン合成やインスリンの分泌機能に支障が出て来て、血糖値が低下してしまいます。けれども、ロイシンを摂取するとアルブミン合成やインスリンの分泌が正常に機能するようになり、肝機能がアップします。

ストレス軽減作用

ロイシンは、ストレスを軽減してリラックス効果を促進する作用があります。

実は、涙の中に「ロイシン-エンケファリン」という物質が含まれています。この物質にはモルヒネに似た麻酔・鎮痛作用を持つペプチドになります。泣くとスッキリするのは、ロイシン-エンケファリンが分泌されるからのようです。

ウィリアム・H・フレイは、「人はなぜ泣くのか」という研究を行ないました。そして、涙が流れる時に、ロイシン-エンケファリンが分泌され、涙の中に入ります。フレイは、涙に精神的なストレスを解消する働きがあるのではないかと考えていました。

心身の健康を保つアミノ酸「トリプトファン」

「トリプトファン」は、必須アミノ酸のひとつになります。

強い抗ストレス作用のある「セロトニン」、快適な睡眠に必要な「メラトニン」など、神経伝達物質やホルモンなどの前駆体(原料)として使われています。

トリプトファンは、心身の健康を保つのに欠くことの出来ないアミノ酸と言えるのではないでしょうか?トリプトファンには次の様な作用や効果が期待出来ます。

不眠解消作用

トリプトファンは脳に運ばれて、ビタミンB6、ナイアシン、マグネシウムと一緒に神経伝達物質「セロトニン」の原料になります。

セロトニンには睡眠促進効果、精神を落ち着かせて安定させる効果があります。セロトニンは、脳の松果体で「メラトニン」に変わります。

メラトニンには体内時計の調整を行い、睡眠時間の乱れを正常にしたり、時差ぼけなどの調整に作用したりします。

アメリカではトリプトファンは天然の催眠剤として知られています。

アンチエイジング作用

また、体内の活性酸素を排除する働きもあります。そのため、アンチエイジングの効果が期待されています。

メラトニンは「若返りの薬」とも呼ばれていますが、その分泌量は年齢を重ねるごとに少なくなってしまいます。けれども、脳内のトリプトファン濃度が増えることでセロトニンも増加してメラトニンに変換することで睡眠の質がアップし、アンチエイジング効果が期待出来ます。

鎮痛作用

アメリカのテンプル大学健康科学センターにおいて、トリプトファンが鎮痛剤としての作用があることを証明する実験が行われました。被験者は、あごに慢性的な痛みがある患者グループになります。トリプトファンを与えてセロトニンの濃度が高まると、あごの痛みが減り、歯に痛みが与えられても高い耐性を示したと報告されています。

集中力、記憶力アップ

ドーパミンやノルアドレナリンの神経伝達物質の生成にもチロシンと共に関わります。

ドーパミンとノルアドレナリンは、ホルモン調節に関与しやる気をアップするのに欠かすことの出来ないホルモンになります。

これまでの研究によって、脳や行動障害の治療に有効であることが分かっています。また、不眠症やうつ病治療効果にも期待が集まっています。

これらの作用以外にも、免疫系に作用することでコレステロール値や血圧の調整、性機能のアップ、更年期障害の軽減などさまざま効果や作用が期待されています。

疲れにくい身体作りをサポートするアミノ酸「クレアチン」

「クレアチン」は、体内で合成することが可能なアミノ酸になります。クレアチンの大半はクレアチンリン酸として筋肉にあります。筋肉が収縮するときのエネルギーATPを再合成するときに使われます。

クレアチンは主に肝臓・腎臓で、アルギニン、グリシン、メチオニンから生成されます。生成されたクレアチンは血液に溶け込んで体の様々な組織に運ばれて行きます。クレアチンのおよそ95%は骨格筋にあると言われています。

けれども、体内で生成されるクレアチンは必要な量のおよそ50%程度と言われています。そのため足りない分は食べ物などから摂取する必要があります。

また、クレアチンを生成する速さは年齢と共に遅くなってしまうため、筋肉量、筋力、運動能力に影響を及ぼしてしまうことになります。

クレアチンには、次のような作用や効果が期待出来ます。

持久力アップ

クレアチンは、エネルギーの生成を促します。このことによって、運動を行なう時などの持久力や筋力をアップする作用があると言われています。

クレアチンの持久力アップ効果や筋力アップ効果については、さまざまな研究が進められています。そうした研究によると、短い時間でハードな運動を繰り返す時に、運動能力をアップする効果が認められています。そのため、クレアチンは多くのスポーツ選手に使われています。一例として、1996年のアトランタオリンピックに参加していた選手のちおよそ80%の選手がクレアチンを使用していたと言われています。

また、高齢者の運動能力への作用についても研究が進められています。

筋肉修復作用

ケガなどが原因で、腕や脚をギプスで固定して筋肉を使わない期間が続いてしまうと、筋肉が縮んでしまったり、筋力が衰えてしまったりします。

筋肉を使うことが出来ない期間にクレアチンを摂取しておくことで、筋肉が修復され、回復が早められる作用が確認されています。

この筋肉修復作用について、次の様な実験が行われました。健常な成人22名を対象として、右足をギプスで固定し、リハビリトレーニングと供にクレアチンを1日当たり開始時20g ~終了時5gの量を10週間摂取させたところ、膝関節伸展力ならびに膝下筋面積でより早い回復傾向が確認されました。クレアチンには筋肉回復促進作用があると期待されています。

記憶力・学習能力アップ

クレアチンが存在しているのは骨格筋だけではありません。脳や神経細胞にもあります。クレアチンには、エネルギーを生成する作用がありますので、記憶能力や学習能力の改善にも作用すると言われています。

免疫力をアップするアミノ酸「アルギニン」と「グルタミン」

免疫力をアップして病気にかかりにくい身体作りのサポートを行なうアミノ酸として「アルギニン」と「グルタミン」をご紹介したいと思います。

まずは、アルギニンからご紹介します。

アルギニン

「アルギニン」は、非必須アミノ酸の一種になります。

作用としては、成長ホルモンの分泌を促したり、筋肉組織を強化したり、免疫力アップなどがあります。

また、アンモニアを無毒化したり、血管の拡張作用によって血液の流れが改善される作用もあります。他には、肌の保湿作用、新陳代謝促進による美肌作用などもあります。

アルギニンの免疫力アップ作用について詳しく見てみましょう。

免疫力を高める効果

アルギニンには、マクロファージと呼ばれている免疫細胞を活発にさせる作用があります。マクロファージは、体内に侵入してきた細菌やウイルスなどを捕食して処理する白血球になります。

免疫力がアップすることによって、病気に負けない強い身体を作ることが期待出来るようになります。また、アルギニンには細胞を増やして、組織の修復に必要な物質ポリアミンを生成して、傷の治りに必要な成分の生成にも関わっています。

医療現場では、手術後の回復を早めたり、感染症などの合併症の発症率を抑えたりする方法としてアルギニンが配合された輸液の使用が行なわれています。

また、経腸栄養での研究も行なわれていて、アルギニンにω(オメガ)-3系の脂肪酸や核酸をプラスした経腸栄養剤によって、手術後の感染から身体が守られる作用があることが分かって来ています。

グルタミン

「グルタミン」は、非必須アミノ酸の一種です。体内に一番多く存在しているアミノ酸になります。その割合は、人間の骨格筋の遊離アミノ酸のおよそ60%になっています。

グルタミンには、筋肉強化、筋肉疲労回復作用などがあります。また、胃腸の働きを助ける医薬品としても利用されています。近年の研究によって、グルタミンにはアルコールの代謝を促す作用があることも分かっています。

それでは、グルタミンの免疫力アップ作用について確認しておくことにしましょう。

免疫力アップ作用

グルタミンにはウイルスや細菌などの異物による攻撃から身体を守る免疫機能をアップする作用があります。インフルエンザウイルスに対する作用や、アレルギー症状を防いだり改善したりする作用にも期待が持たれています。

また、グルタミンには窒素の代謝に作用することによって、創傷を治すのに必要なタンパク質の前駆物質になります。そして傷の治りを早める作用があると考えられています。

グルタミンが関係して生成される窒素量は、体内で作られる窒素量のおよそ3分の1に達しています。

また、腹腔部手術を受けた患者に、グルタミンを含む高カロリー輸液を与えることで、外科手術の傷の回復が早くなったというレポートがあります。

健康寿命をサポートすることが可能なアミノ酸をご紹介して来ましたが、アミノ酸には様々な作用や効果があります。健康寿命を延ばすためのサポート役としてアミノ酸を試してみてはいかがでしょうか?

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