アルギニンとは?その歴史や働きについて解説!

その他のアミノ酸

アミノ酸は、筋肉や血管など身体を構成するタンパク質を生成する働き以外に、健康、スポーツ、美容等、様々な面でのサポート効果が期待されています。

アミノ酸ひとつひとつは、それぞれに個性があり様々な働きをしています。そんな個性的なアミノ酸の中でも注目集めている「アルギニン」についてご紹介することにしましょう。

 

「アルギニン」の歴史

まずは、「アルギニン」の歴史についてみてみることにしましょう。

ドイツ人のアーネスト・アウグスト・シュルツェとE.シュタイガーによって、今から230年以上前の1886年に、白化させたルピナス(豆)の芽から発見されたのが「アルギニン」です。そのルピナスの芽から取り出した硝酸塩が銀(argent)のように白かったので「アルギニン(arginine)」と名づけられました。名前の由来は古代ギリシャ語「argyros:アルギュロス」と言われています。アルギュロスとは「綺麗な銀色の輝き」という意味になります。

現在では、「アルギニン」は「非必須アミノ酸」の中の「準必須アミノ酸」のひとつとして広く知られています。

「準必須アミノ酸」についてご存知の方も多いとは思いますが、ここで、「準必須アミノ酸」について少し説明しておくことにしましょう。

タンパク質を構成している成分として20種類のアミノ酸があるのをご存知の方は多いことでしょう。この20種類のアミノ酸の内、体内で合成することが出来ないアミノ酸を「必須アミノ酸」と呼びトリプトファン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、トレオニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、ヒスチジンの9種類のアミノ酸がこれに該当します。

そして体内で合成することが出来る11種類のアミノ酸を「非必須アミノ酸」として分類しています。

非必須アミノ酸に該当するアミノ酸のひとつに「アルギニン」があります。そしてこの非必須アミノ酸の中で、体内で合成することは出来るけれども、必要な量の合成が行なわれていないために、食べ物から積極的に取り入れる必要があるアミノ酸があります。このアミノ酸のことを「準必須アミノ酸」と呼んでいます。

この「準必須アミノ酸」に該当するアミノ酸として考えられているのは、「アルギニン」、「システイン」、「チロシン」、「グルタミン」になります。

この内「グルタミン」以外は幼児期において体内での合成量が不十分なアミノ酸とされていて、成人では準必須アミノ酸として区分されることはありません。

「グルタミン」は、ストレスなどによって不足する傾向があるため、成人でも準必須アミノ酸として考えられています。

「アルギニン」が幼児期に限って「準必須アミノ酸」である理由

それでは、「アルギニン」が幼児期に限って準必須アミノ酸とされている理由について見てみることにしましょう。これは、「アルギニン」の重大の役割のひとつに大きく関係しています。幼児期に限って「アルギニン」の合成量が不足してしまう理由として、「成長をしている」ことが大きく関係しています。子供の頃は身長が伸びたり、身体の機能が成長したりして行くための大切な時期に当たります。そのため、大人よりもより多くの成長ホルモンの分泌が必要になって来ます。

「アルギニン」の作用として、脳下垂体を刺激して成長ホルモンの分泌を促す作用が確認されています。ある研究データによると、「アルギニン」を摂取した被験者グループとプラセボを摂取した被験者グループでは、「アルギニン」を摂取した被験者グループの方が、睡眠中の「成長ホルモン」の分泌量が高くなったと報告されています。

「成長ホルモン」は、脳下垂体から分泌されているホルモンになります。脳下垂体から放出されたホルモンは肝臓に作用して「ソマトメジンC」の生成を促します。肝臓で生成された後、血液中に放出されて身体全体に行きわたることになります。

「ソマトメジンC」とは、体内で骨や内臓、筋肉などの成長を促進するホルモンのひとつで、IGF-1とも呼ばれています。そのため、幼児期の成長に「ソマトメジンC」の分泌量は大きく関係してくるとも言われています。

成長ホルモンは子供のときだけでなく大人になっても分泌されています。子供の場合はグングンと成長することが必要ですので、大人に比べて大量の成長ホルモンが必要になりますが、幼児期は「アルギニン」の合成速度が遅く間に合わない状況になってしまいます。そのため、成長ホルモンの分泌を促す作用が期待されている「アルギニン」は幼児期に限って「準必須アミノ酸」にみなされることになります。

けれども、成長ホルモンには免疫力を高めたり、傷の治りを早くしたり、タンパク質の合成を促進させたりといった、修復・再生機能に対する重要な役割があります。

尿素回路(オルニチンサイクル)での「アルギニン」の役割

それでは、「アルギニン」にはタンパク質の構成成分としての役割以外にどんな重要な役割があるのか確認してみましょう。

重要な役割のひとつとして、肝臓での「尿素回路」での役割があります。生物の授業でも取り上げられますので、お聞きになったことがある方も多いのではないでしょうか?

「尿素回路」とは、代謝回路のひとつになります。体内でタンパク質やアミノ酸が分解される際に、アンモニアが生じてしまいます。アンモニアには強い毒性があるためそのままでは、体内に悪い影響が起こってしまうことになります。そうした影響を回避するために肝細胞にある「尿素回路」で毒性の弱い尿素に作りかえられるというシステムがあります。このアンモニアを無毒化する回路は次のようになります。

  1. まずは、肝細胞のミトコンドリアで、アンモニアが二酸化炭素から合成された物質が「オルニチン」を取り込んだことによって「シトルリン」に変化します。
  2. 次に、肝細胞細胞質において「シトルリン」は「アスパラギン酸」を取り入れて「アルギニノコハク酸」に変化します。そして「フマル酸」と反応することで「アルギニン」になります。
  3. そして、「アルギニン」は尿素と一酸化炭素を放出して「オルニチン」に変化します。

「尿素回路」の仕組みを理解して頂ければ、この回路の元になる「オルニチン」を合成するのに「アルギニン」が重要な役割を果たしていることがお分かり頂けるのではないかと思います。

また、このサイクルが行なわれる際に、「ATP(アデノシン三リン酸)」が消費されます。「ATP」は基礎代謝に関わるものになり、その生成には「TCAサイクル(クエン酸回路)」が大きく関係しています。

「アルギニン」と「TCAサイクル(クエン酸回路)」「ATP(アデノシン三リン酸)」の関係

尿素回路を行なう際に必要なエネルギー「ATP」を生み出すことに「TCAサイクル」は大きく関係しているのですが、その点についてもう少し詳しく見ておくことにしましょう。

実は、生物が生きて行くために必要なエネルギーである「ATP」は、アンモニアがあると上手く生成することが出来なくなってしまいます。

そのため、体内からアンモニアを取り除く必要が出て来ます。そのアンモニアを無毒化して尿素に変えるための重要なサイクルが先ほどご紹介した「尿素回路」になります。

「アルギニン」が、この尿素回路で重要な役割を果たしているのは既にご説明した通りです。そのため、尿素回路の最終的なアミノ酸である「アルギニン」を摂取する事で「TCAサイクル」が活性化されることになります。

この「TCAサイクル」は、アミノ酸代謝、尿素回路、糖新生等、体内の他の経路の仲介的役割を果たしています。そのため「代謝の交差点」とも呼ばれています。

「TCAサイクル」によって起こる作用のひとつとして、水素を還元型の補酵素の形(3 NADH2+とFADH2)で捕捉するという作用があります。ここで生成された還元型の補酵素が「酸化的リン酸化」という過程で「ATP」に変化することになります。

ATPの生成過程をご理解頂くことで、「アルギニン」が「TCAサイクル」と「ATP」の生成に大きく関わっていることがお分かり頂けたのではないかと思います。

ここで少しだけ「酸化的リン酸化」について簡単にご説明しておくことにしましょう。

「酸化的リン酸化」とは、基質の酸化つまり電子を失う反応が起こることによって「ATP」を産生することを言います。ミトコンドリア内膜で電子伝達系(呼吸鎖)と呼ばれる経路において行われています。

体内のなんと95%以上のATPが電子伝達系で産生されていると言われています。電子伝達系の構成要素は、主に電子伝達複合体Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、ⅣとコエンザイムQ(ユビキノン)、シトクロム、ATP合成酵素(複合体Ⅴ)になります。

コエンザイムQ(ユビキノン)はサプリメントとして脚光を浴びた補酵素ですので、多くの方がご存知だと思います。

そして、「酸化的リン酸化」を行なう際には、クエン酸回路等から供給された物質を使用することになります。

「アルギニン」の期待される効果

「アルギニン」の様々な役割について見てきましたが、それでは、「アルギニン」に期待される効果としてどんなものがあるのでしょうか?

次のような効果・作用が期待されています。

成長ホルモン分泌促進作用

「アルギニン」が成長ホルモンの分泌を促す作用については、先に説明させて頂いた通りですが、幼児期の成長ホルモンの分泌を促すことはお子さんの健やかな成長にとって重要な鍵となります。

成長ホルモンには、様々な働きがあり大人にとっても大変重要なホルモンと言えます。中でも「抗インスリン作用」は、最近特に注目を集めている作用です。アンチエイジングに興味のある方であればよく耳にする言葉として「酸化」と「糖化」があると思います。「抗インスリン作用」はこの内「糖化現象」を防ぐ働きになります。そして、糖質の代謝や脂質の代謝を調節する作用もありますので、美容と健康のための重要な役割を果たしていると言えます。

他には、細胞の修復・再生を促す作用や、ストレス解消にも成長ホルモンは大きく関与していると言われています。

性機能向上

性機能に問題が起こってしまう原因は様々ですが、その中の原因のひとつとして血管や血流による障害があります。

「アルギニン」が体内に取り込まれることで、一酸化窒素に変化することになります。一酸化窒素には血管を拡張する作用がありますので、血流が改善されることになります。血流が改善されることで、EDの改善、精子の量のアップや運動性向上が期待されています。

疲労回復

疲れには、「筋肉疲労」、「脳疲労」、「臓器疲労」の三つの疲労があります。

この内、「アルギニン」は「脳疲労」に対する疲労回復作用が期待されています。脳の疲労の原因としてはストレスなどもありますが、それ以外の原因として「アンモニア」もあります。

「アルギニン」はアンモニアを無毒化する「尿素回路」に関わっていますので、「アルギニン」を積極的に摂取することで脳疲労を回復させる作用が期待出来ます。

人は生命を維持するために、食べ物を食べたり、呼吸をしたりしますが、そうした生命維持活動の中で「活性酸素」、「アンモニア」、「糖化」等の毒も生み出してしまっています。

こうした毒の中で、アンモニアは脳の疲れに大きな影響を及ぼしてしまっています。アンモニアによる脳疲労が起こってしまうと、次の様な症状が現れます。

「考えがまとまらない」、「頭がぼんやりする」こうした症状は「ブレイン・フォグ」と呼ばれ、アンモニアによる脳の疲労になります。精神的な疲れやストレスで脳を使うと、脳の中のアンモニアが増加してしまうと言われています。

免疫力向上

更に、「アルギニン」には細菌やウイルスに対する抵抗力を高める作用や、体内のがん細胞を攻撃する作用も期待されています。

中でも「アルギニン」が生成に関わっている一酸化窒素は、血管拡張作用だけでなく、がん細胞が増えるのに必要な酵素の働きを抑える作用が確認されています。

「アルギニン」を多く含む食品

「アルギニン」を多く含む食品にはどんなものがあるのかご紹介することにしましょう。

鶏肉、牛肉、牛乳、エビ、大豆、ナッツ類、ニンニク、マカ、うなぎなどに多く含まれていますが、中でも大豆食品はおススメです。100g当たりのアルギニンの含有量も合わせて見てみましょう。

  • 高野豆腐 4,200mg
  • 大豆 2,800mg
  • 味噌 910mg
  • 納豆 940mg

大豆食品のアルギニンの含有量は相当なものですので、積極的に取りたい食材ではあります。けれども、その反面日本人の和食離れも進んでしまっていますので、大豆食品を取り入れる機会は減少傾向にあるとも言えそうです。

「アルギニン」はアミノ酸の分解や合成をサポートする補酵素である「ビタミンB6」と一緒に摂取することで、更に効率がアップすると言われていますので、是非一緒に取りたいものです。

食品の中で「アルギニン」と「ビタミンB6」の両方を合わせもっているものとして、マグロがあります。

また、「アルギニン」は「シトルリン」、「オルニチン」、「亜鉛」、「葉酸」、「カフェイン」、「ビタミンE」等と合わせて摂取することで相乗効果が出て高い効果や作用を発揮すると言われています。こうした相乗効果を期待される場合は、サプリメントによるサポートが効果的と言えるでしょう。

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