アミノ酸ってどんなもの?その効果や働きを解説!

健康やスポーツ面で大きく注目を集めている「アミノ酸」ですが、「アミノ酸」の研究が盛んになったのは比較的新しく今後新たな発見や発展に期待が寄せられています。
そこで「アミノ酸」について様々な角度から見てみることにしましょう。
目次
アミノ酸の発見
まずは、「アミノ酸」がいつ頃発見されたのか調べてみることにしましょう。
「アミノ酸」が初めて発見されたのは、1806年になります。
フランスの化学者であるルイ=ニコラ・ヴォークランとピエール=ジャン・ロビケの2人によって、アスパラガスの汁からアミノ酸の結晶を取り出すことに成功しました。このとき発見されたアミノ酸が「アスパラギン」になります。
そして、アスパラガスから「アスパラギン酸」、尿結石から「システイン」、ゼラチンから「グリシン」、羊毛から「ロイシン」と言った具合に次々とアミノ酸が発見されて行きました。
そして、1935年までにタンパク質を構成している全てのアミノ酸を発見することが出来、タンパク質がアミノ酸から出来ていることが解明されました。
日本では「うま味」成分として有名な「グルタミン酸」ですが、1866年にドイツのリットハウゼンによって発見されました。リットハウゼンは小麦のたんぱく質グルテンから「グルタミン酸」を取り出しましたが、1908年に東京帝国大学(現東京大学)の池田菊苗教授がだし昆布から「グルタミン酸」を発見しました。
また、1930年には日本人の学者によってスイカから遊離アミノ酸の一種である「シトルリン」が発見されています。
タンパク質を作っているアミノ酸
それでは、人の身体のおよそ20%がタンパク質から出来ていると言われていますが、そのタンパク質を構成している全てのアミノ酸は1935年までに発見されていたことは先にご説明した通りです。それでは、タンパク質を構成しているアミノ酸にはどのようなものがあるのか確認しておきましょう。
タンパク質を構成してアミノ酸には20種類あり、大きく分けると「必須アミノ酸」と「非必須アミノ酸」に分けることが出来ます。
「必須アミノ酸」とは、体内で合成することが出来ないため、食事などで必ず摂取する必要があるアミノ酸になります。ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、トリプトファン、バリンの9種類のアミノ酸が「必須アミノ酸」に該当します。
「非必須アミノ酸」とは、体内で他のアミノ酸から合成することが可能なアミノ酸になります。アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グリシン、グルタミン、グルタミン酸、システイン、セリン、チロシン、プロリンの11種類のアミノ酸が「非必須アミノ酸」に該当します。
必須と非必須という表現をしているため、時折勘違いされてしまう方がいらっしゃいますが、「非必須アミノ酸」が「必須アミノ酸」に比べて重要でないということではありません。どちらのアミノ酸もタンパク質を構成するために欠くことの出来ないアミノ酸であることに変わりはありません。
あくまでも、食事などによる経口摂取することが、必須なのかそうでないのかという区分になります。
皮膚、髪、内臓、筋肉、血管など、実に多くのものがタンパク質によって出来ています。まさに生命を維持するための条件を支えているのがタンパク質、そしてそのタンパク質を生成しているのがアミノ酸ということになります。つまり、アミノ酸によって生命が誕生して維持されていると言っても過言ではありません。
アミノ酸スコアとは?
それでは、アミノ酸が多く含まれている食品にはどんなものがあるのでしょうか?全てのアミノ酸ではなく、食事による摂取が必須になっている「必須アミノ酸」について見てみることにしましょう。
けれども、その前にアミノ酸スコアについて説明しておきたいと思います。
アミノ酸スコアとは、その食品に含まれている「必須アミノ酸」のバランスを示すものになります。スコアの計算方法は、その食品に含まれている「必須アミノ酸」の中で一番不足しているアミノ酸(第一制限アミノ酸)の割合をスコアで表したものになります。スコアの上限は100になります。
どうして必須アミノ酸に限ってこうしたアミノ酸スコアが用意されているのでしょうか?
それは、必須アミノ酸独自のシステムがあるからになります。実は必須アミノ酸は9種類のアミノ酸の中の第一制限アミノ酸のスコアに影響を受けてしまいます。そのため、他の必須アミノ酸が100の場合でも、第一制限アミノ酸のスコアが仮に60だとしたら、他の必須アミノ酸のスコアは60になってしまうことになります。
どうしてこうしたスコアになってしまうのでしょうか?それは、タンパク質を生成するときに、不足している必須アミノ酸があれば、生成することが出来るタンパク質の量は不足している必須アミノ酸の量までということになるからです。例えば、車を製造するときに、タイヤの数が不足していたとしたら、車として完成するのは、タイヤの数が用意されている分までになるのではないでしょうか?タイヤがない車で道路を走行することは出来ません。必須アミノ酸のアミノ酸スコアもこれに似たところがあります。
発酵させることで美味しくなる理由
洋の東西を問わず世界各地には発酵食品があります。
タンパク質を多く含む食品を発酵させることで美味しさがアップことは良く知られています。実はこの美味しさを増すことにアミノ酸が大きく関わっています。
日本の代表的な発酵食品として「味噌」と「醤油」がありますが、どちらも材料はタンパク質が豊富に含まれている大豆です。大豆を発酵させることで、でんぷん質やタンパク質が分解されてアミノ酸や糖分が生成されます。発酵食品には、こうした新たな美味しさが加わるだけでなく、栄養の吸収率が高くなったり、長期保存が可能になったり、微生物の働きで腸の健康がアップしたりするようになります。
日本でも今ではもうスッカリお馴染みになっているヨーグルトやチーズも牛乳などを発酵させて作った発酵食品です。牛乳のタンパク質がアミノ酸に分解されることで、原料の牛乳とは異なる味わいの食品になっています。
東南アジアのナンプラーや中国の豆板醤なども、魚や大豆・そら豆などを発酵させることでタンパク質がアミノ酸に分解され、それぞれの地域の料理に相応しい味わいの調味料になっています。
発酵することによって生成されるアミノ酸は、食品のうま味を決めるための重要な要素と言えるでしょう。
アミノ酸の味ってどんなの?
タンパク質を発酵させることでアミノ酸に分解されて美味しさが増すことが分かりました。それではそうした味の決め手になるアミノ酸は元々どんな味がするのでしょうか?
味覚には、「甘味」、「酸味」、「塩味」、「苦味」、「うま味」の5つあるのはご存知の通りです。実はアミノ酸にはこの5つの味覚の内「甘味」、「酸味」、「苦味」、「うま味」があります。
それでは、どのアミノ酸がどの味に該当するのか見てみることにしましょう。
- 甘味のあるアミノ酸
- グリシン、アラニン、スレオニン、プロリン、セリン、グルタミン
- 苦味のあるアミノ酸
- フェニルアラニン、チロシン、バリン、メチオニン、アルギニン、ロイシン、イソロイシン、ヒスチジン
- 酸味のあるアミノ酸
- アスパラギン酸、アスパラギン
- うま味のあるアミノ酸
- グルタミン酸
アミノ酸の甘味の特徴は、サッパリとした自然な甘味になります。アミノ酸の苦味にはいくつかバリエーションがあります。メチオニンの苦味はとても苦いのですが、バリンには苦味だけでなく多少の甘味も含まれています。
また、料理の味を決めるうま味と酸味ですが、アミノ酸研究の中でグルタミン酸が発見されたことは、人の味覚を研究する上でも、更には食文化の面においても大きな功績を残す発見と言えるのではないでしょうか?
美味しさを支えるアミノ酸
アミノ酸には「甘味」、「酸味」、「苦味」、「うま味」の4つの味があるのは先にご説明した通りですが、「うま味」に関する認識は欧米ではなかなか理解されることがありませんでした。
1908年に池田菊苗教授がだし昆布から「グルタミン酸」を発見して「うま味」という味覚を主張しました。けれども、この「うま味」が認められたのは発見から90年以上経った2000年になります。
この年、舌にある味蕾(みらい)の感覚細胞の中に「グルタミン酸受容体」が発見されました。この発見によってグルタミンを感じることが出来ることが分かり、「うま味」の存在が認められることになりました。現在では「UMAMI」として海外でも知られるようになりました。
この「うま味」を発見することが出来たのは、日本料理に「だし」が使われているからとも言えるでしょう。因みに日本料理で「うま味」として有名なカツオやシイタケの「うま味」はアミノ酸ではなく核酸になります。
また、1つの食材のなかにいくつものアミノ酸が存在していますが、その割合が変化することによって味も変わって行きます。こうした変化を熟成と呼んでいます。
野菜の美味しさを測る尺度として「糖度」が利用されていますが、実は美味しさを決めるのは糖度だけでなく、アミノ酸も大きく関係しています。アミノ酸には4種類の味がありますので、このアミノ酸のバランスが味を大きく左右して美味しさを決定づける大きな要因となっています。
例えば、トマトは調味料としても使われることの多い野菜ですが、その秘密はトマトに含まれている「グルタミン酸」と「アスパラギン酸」の割合にあります。トマトの場合「グルタミン酸」4に対して「アスパラギン酸」は1の割合になります。「アスパラギン酸」は酸味のあるアミノ酸になりますが、熟する前のトマトは「グルタミン酸」の割合が少ないため、「アスパラギン酸」の酸味の方が強く出てしまい、酸っぱいと感じてしまうことになります。熟してくるに従って「グルタミン酸」の割合が上昇して来て、うま味のあるトマトへと変化して行くことになります。
トマトには「グルタミン酸」が多く含まれていますので、ソースや調味料に使うことでコクのある味をだすことが出来ます。
美しさを支えるアミノ酸
アミノ酸が支えているのは、食の豊かさだけではありません。美容面でも大きな支えとなっています。
現在では当たり前のように言われていますので、あまり気に留めることは無くなってしまっているかも知れませんが、アミノ酸はシャンプー、リンス、石鹸などに配合されています。
アミノ酸系シャンプーや石鹸の利点は、その低刺激性にあります。通常の石鹸はアルカリ性ですが、アミノ酸系のシャンプーや石鹸は肌の本来の状態である弱酸性に近い状態になっています。
また、美肌作りにもアミノ酸は大きく貢献しています。皮膚の角質層の中にある天然保湿因子(NFM)があります。この天然保湿因子の40%はアミノ酸で、12%がアミノ酸のひとつグルタミン酸からできるピロリドンカルボン酸(PCA)になります。アミノ酸を化粧品に配合することで、肌のバリア機能や保湿機能を高めることが可能になります。
さらに、サプリメントや健康食品として注目されている「コラーゲン」もアミノ酸で構成されています。そのため分子の大きさとしては、アミノ酸のおよそ3000倍あります。
そして、髪の毛にも良い影響を与えています。髪の毛はキューティクルによって守られていますが、このキューティクルの保湿成分になっているがアミノ酸になります。アミノ酸系シャンプーやリンスを使うことで、保湿力が高まり丈夫な髪へとなって行きます。
更に、アミノ酸の脂肪燃焼効果にも注目が集まっています。アミノ酸の中でも「BCAA」と呼ばれている「BCAA」は、Branched Chain Amino Acidsの頭文字で、それらアミノ酸の分子構造から分岐鎖(ぶんきさ)アミノ酸と呼ばれ、具体的には必須アミノ酸であるバリン、ロイシン、イソロイシンのことを言います。この「BCAA」を補給しながらトレーニングを行なうことで、筋肉の再生が行なわれます。脂肪を燃やすためには筋肉が必要になりますので、筋肉量がアップすることで、より脂肪が燃焼しやすくなります。
医療も支えるアミノ酸
アミノ酸は医療分野においても貢献しています。
1956年に、世界初の手術前および手術後の患者さんを対象とした栄養補給を目的とした高品質のアミノ酸輸液が日本で発売されました。高品質なアミノ酸を用いた輸液の製造・販売は、世界初の出来事になります。また、アミノ酸を輸液に使用することで、拒絶反応も減少して行っています。
また、アミノ酸は医薬品の原材料として使われています。
グルタミン酸は既に潰瘍の治療薬として使われています。グルタミン酸の消化管の粘膜を修復する作用面に対して大変期待されています。
また、アルギニンの期待されている免疫増強作用は、健康な人に対してはもちろんのこと、免疫機能が低下してしまっている手術後の患者さん、集中治療を受けている患者さんやHIVウイルスに感染している患者さんにも免疫状況向上効果が認められています。
さらに、アミノ酸が医薬中間体として原料に使われている薬はとても多くなっています。どんな種類の薬に使われているかと言いますと、「抗生物質」、「血圧降下剤」、「抗ウイルス薬」など、実に様々な種類の薬に使用されています。
様々な角度からアミノ酸について見て来ましたが、実に様々な分野で活用されていることがお分かり頂けたのではないかと思います。